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樹木の疑問と不思議Q&A

 


枝・葉に関すること

 

Q01.

常緑樹と落葉樹について教えてください。

 

A.

常緑樹は一年中葉をつけていて、いつも緑に見えます。一方、落葉樹は、秋に葉を落として冬に葉のない樹木です。
落葉樹の多くは、新緑や紅葉の美しいブナやカエデ類に代表される広葉樹で、落葉広葉樹と呼ばれます。冬の間は、呼吸による消費や水分消費を防ぐため葉を落として越冬します。そして、春に芽吹き再び葉をつけます。
シイやカシ類、クスノキ、ツバキなどの常緑広葉樹は暖かい地方に生育し、クチクラ層が発達した厚い葉を持つので照葉樹といわれています。また、針葉樹の多くは、スギ、ヒノキ、アカマツなどの常緑針葉樹ですが、カラマツ、メタセコイア、ラクウショウなどの落葉針葉樹もあります。

 

Q02.

落葉樹は、どうして葉を落とすようになったのですか。

 

A.

落葉樹は、冬の間は呼吸による消費や水分消費を防ぐため葉を落として越冬し、そして春に芽吹き再び葉をつけます。こうした落葉樹が葉を落とす落葉性は、樹木が一年を通じて気候が安定した熱帯地域から乾期や冬があるなど生育条件の厳しい地域に進出する過程で、適応的に備わってきた性質と考えられています。

 

Q03.

常緑樹は葉を落とさないのですか。

 

A.

ユズリハの例でよく知られているように、常緑樹も葉を落とします。ただし、葉樹のように秋に一斉に落葉しないということです。ユズリハは、5月頃に新葉が伸びると旧葉はバラバラと落ちてしまいます。このように、常緑樹には、毎年新葉と旧葉が交代するものや、2〜3年あるいは4〜5年かけて新しい葉と代わるものなどがあります。

 

Q04.

落葉広葉樹が紅葉や黄葉するのはなぜですか。

 

A.

落葉広葉樹は、葉と枝の間(葉柄の基部)に離層という小さい細胞の層ができて水分や養分の流れを止め、やがて落葉します。このため、葉で作られた糖分は離層によって行き場がなくなって葉にたまり、この糖からクリサンテミン(アントシアンの一種)という赤い色素が作られます。そして葉緑素のクロロフィルが分解して緑色が消え、葉は赤く色づきます。また、イチョウやカツラなどの黄葉は、キサントフィルなどのカロチノイドという黄色の色素によって起こります。

 

Q05.

同じ樹種でも、場所によって紅葉等の色が違うのはなぜですか。

 

A.

落葉広葉樹の紅葉や黄葉は、日当たりがよく、空気のきれいなところで、夜間の冷え込みが続くことによって、鮮やかな色調になります。このため、同一樹種でも場所によって紅葉等の美しさが違って見えるのです。

 

Q06.

イチョウは広い葉をつけますが、針葉樹に分類されています。どうしてですか。

 

A.

イチョウの果実であるギンナン(銀杏)は胚珠がむき出しになっているので、イチョウはスギやアカマツなどと同じ裸子植物ですが、葉が扇形で幅広いので広葉樹か針葉樹か議論されることがあります。
広葉樹は葉の幅が広い樹木の意味ですが、植物分類上では被子植物のうちの双子葉類の樹木の総称です。一方,針葉樹は針状の葉をもつ樹木という意味ですが、実際には裸子植物のうちの球果植物類とイチイ類が含まれます。従って、裸子植物のイチョウは広葉樹ではありません。
また、針葉樹ともいえないことになりますが、裸子植物という分類上の位置づけや材の組織構造として針葉樹と同じ木部を有していることなどから針葉樹として扱われています。

 

Q07.

「カエデ」と「モミジ」はどう違うのですか。

 

A.

カエデと名のつくものにはイタヤカエデ、ハウチワカエデ、ウリハダカエデなど、モミジと名のつくものにはイロハモミジ、ヤマモミジ、オオモミジなどがあります。植物学上は、両方ともカエデ科カエデ属の植物で、同じ仲間です。
カエデはカエルデ(蛙手)の略、蛙の手に似ているからといわれます。モミジは紅葉と書くように、古くは草木の汁を揉み出して布などを染めたことから、「もみ出す」、「もみ出る」に由来するといわれます。また、ベニバナの花で染めた緋色が秋空に映えるカエデ(モミジ)に通じることから、平安時代に紅葉をモミジと読むようになったといわれます。
カエデやモミジは昔から親しまれてきており、多くの園芸品種が作り出され、記録されています。そして、掌状に葉の裂け方が浅い種類をカエデと呼び、葉の裂け方が深いヤマモミジ系のものをモミジとして区別してきました。

 

Q08.

照葉樹のシイ、カシ類の見分け方を教えてください。

 

A.

シイ類には、スダジイとコジイ(ツブラジイ)があります。また、カシ類には、シラカシ、アカガシ、アラカシ、ウラジロガシ、ツクバネガシ、イチイガシ、ウバメガシなどがあります。いずれもブナ科の樹木で、果実としてドングリをつけます。そして、暖温帯常緑広葉樹林の重要な構成種です。
シイ、カシ類は、似たものが多く識別するのが難しい仲間です。見分けるポイントは、やはり葉です。鋸歯のつく位置や形、葉の裏の色、毛の有無等が大事なことです。また、ドングリの形や大きさ、殻斗(かくと、ドングリのお椀)の形等が識別のポイントとなります。
○スダジイ、コジイは殻斗が割れるタイプで、葉の裏は密生した毛で灰褐色をしています。
○コジイの果実は丸く小粒、スダジイの木肌は縦の割れ目が目立つなどの特徴があります。
○カシ類では、シラカシは葉の裏が淡緑色、ウラジロガシは粉白色で上半部に鋭い鋸歯があって波状になります。  
○アカガシの葉は全縁で鋸歯がなく、葉柄が長いなどの特徴があり、ツクバネガシはアカガシに似ていますが、葉柄が短く葉の上部に鋸歯があることで区別できます。
○アラカシの葉は堅くて、上半部に最も鋭い鋸歯があります。
○シラカシ、ウラジロガシ、アラカシ、アカガシは殻斗が輪状構造をしています。ウバメガシは殻斗がうろこ状になっています。
こうした特徴をしっかりと見極めましょう。

 

Q09.

ネムノキは夜には葉を閉じて眠るそうですが、ほんとうですか。

 

A.

ネムノキ(マメ科)は、斜めに広がった枝にオジギソウ(マメ科)のような葉(2回偶数羽状複葉)をつけています。この葉は夕暮れには眠りにつくようにゆっくり小葉を閉じてたれ下がりはじめ、1〜2時間かけて葉をたれ下げた姿は眠っているように見えます。一方、花は、葉の動きとは逆に、葉を閉じ始める夕方に咲き始め、夜に開花します。
オジギソウは、葉に触ると小葉を閉じおじぎをするように葉をたたみますが、この反応は、小葉の付けに根と葉柄の付け根にある葉枕という膨らんだ部分にある細胞内部の圧力の変化によるものといわれています。
昼は葉を開き、夜は葉を閉じるネムノキの運動は、オジギソウと同じような仕組で、就眠運動と呼ばれます。就眠運動は、クズ、エンドウマメなどのマメ科植物やカタバミ(カタバミ科)などでも見られます。

 

Q10.

落葉樹であるカシワの葉は冬でも枝についたままですが、どうしてですか。

 

A.

木の葉が落葉する前には、葉柄の付け根に離層と呼ばれる細胞層が形成されます。秋になると夜間の低温や日長の短さが引き金となって、この離層の細胞同士の接着が弱くなり、落葉が起こります。そして、多くの落葉樹は、冬を迎える前に裸木となってしまいます。
ところが、落葉広葉樹の中には、はっきりした離層を作らないものがあり、冬になっても枯れて褐色になった葉をつけたまま越冬します。ブナ科のカシワやクヌギ(幼木)、クスノキ科のヤマコウバシ、マンサク科のシナマンサクなどです。枝に残った枯れ葉は、春になって開芽する頃には落葉して新葉と交代します。

 

Q11.

シダレザクラ(枝垂桜)の種類としだれる原因を教えてください。

 

A.

シダレザクラ(別名:イトザクラ)は、サクラの野生種のエドヒガンが枝垂性に変化してできた品種です。したがって、しだれるという性質以外の形質はエドヒガンと同じです。淡紅色、小輪のエドヒガンと同じ形をした花をつけますが、花弁は変異が多く、個体によって花の色や形、大きさなどが異なっています。花の色が濃いベニシダレ(紅枝垂)、さらに八重咲きのものをヤエベニシダレ(八重紅枝垂)と呼んでいます。
しだれる現象は、シダレヤマザクラ(枝垂山桜)、シダレソメイヨシノなど、他のサクラの種や雑種にも現れます。そして、その原因は、若枝の成長速度がしだれない種類より著しく速いため、木化する前に枝葉の自重でしだれると考えられています。

 

Q12.

アカメガシワのような芽出しの赤い樹木は他にもありますか。また、なぜ赤い葉をつけるのですか。

 

A.

アカメガシワのように若葉の赤いものは意外に多く、タブノキ、クスノキ、アセビなど、いずれも展開したばかりの赤みを帯びた新葉は美しいものです。庭木や公園の樹木には、新出猩々(しんでしょうじょう)、手向山(たむけやま)等のカエデの仲間やチャンチン、オオバベニガシワ、カナメモチ、オオカナメモチのレッドロビンなど、鮮やかな紅色から紅紫色の若葉をつけるものがあります。
こうした春から初夏にかけて紅色の新葉をつける現象は「春もみじ」と呼ばれ、この赤い葉の色はやがて緑色に変わってしまいます。新葉の赤い色は、葉の細胞の中にアントシアンが生成されるためで、軟弱な新葉の組織が強い日差しの紫外線によってダメージを受けるのを防いでいるものと考えられます。

 

Q13.

コクサギの葉は2枚1組で枝に互生するそうですが、他にもそうした葉のつき方をする樹木がありますか。

 

A.

コクサギの葉ように枝の左右に2個ずつ互生する葉のつき方は、コクサギ型葉序と呼ばれています。こうした葉のつき方をするものには、庭木に多いサルスベリ(ミソハギ科)、ヤブニッケイ(クスノキ科)などがあります。なお、ヤマコウバシ(クスノキ科)は葉が互生しますが、枝の1カ所から2枚の葉を同じ方向につけます。
葉のつき方は、輪生から対生、続いてコクサギ型葉序を経て互生に進化してきたといわれています。

 

Q14.

サクラの葉にある蜜腺は、何のためにあるのですか。

 

A.

サクラの葉の基部や葉柄に小さな粒が向き合うようにある2個の蜜腺は、花以外にある蜜腺ということで花外蜜腺と呼ばれています。若葉のうちは花にある蜜腺のように蜜を分泌してアリをおびき寄せるといわれます。アリの集団はサクラの木を害するアリマキなどの害虫を駆除すると考えられていますが、詳細はよくわかっていないようです。

 

Q15.

蜜腺によってサクラの種類等がわかるそうですが、ほんとうですか。

 

A.

蜜腺があるかないかで、サクラの仲間、プルヌス属(Plunus)の見分けに使われます。例えば、一見、サクラらしくないリンボクやバクチノキにも蜜腺があるので、プルヌス属とわかります。
また、蜜腺の位置がサクラの種類を見分ける重要な手掛かりになります。オオシマザクラの蜜腺は葉柄上に2個つきますが、エドヒガンの蜜腺は葉の基部の縁につくなど、違いが見られます。

 

Q16.

サクラの葉にあるような蜜腺をもつ植物は、他にもあるのですか。

 

A.

花外蜜腺は、葉身の基部(イイギリ、アカメガシワ)、葉柄の基部にある一対の托葉、がく片(ソラマメ)、茎の節(イタドリ)等にもつきます。そじて、マメ科、トウダイグサ科、タデ科、ウリ科、ツリフネソウ科等、多くの植物で知られています。

 

Q17.

サクラの枝によく見られる「てんぐ巣病」は、どんな病気ですか。

 

A.

てんぐ巣病は、公園等に植えられているソメイヨシノに多く見られ、糸状菌(カビ)の一種であるタフリナ菌によって発生する病気です。この病原菌は、胞子が空気中に飛散して伝染すると考えられています。枝からほうき状に小枝が出て、あたかも天狗の巣のように見えるので、てんぐ巣病と呼ばれます。病気にかかった部分は早めに葉を開き、花の時期になっても花をつけません。各地のサクラの名所でサクラを衰退させている大きな原因の一つとなっています。なお、てんぐ巣病の防除は、冬の間に病巣の枝の膨らんだ下の部分から切除することです。切除した部分には、殺菌剤入りの癒合剤を塗付することが必要です。

 

Q18.

新緑のコナラの小枝に黄緑色でクルミ大のリンゴのようなものがついていました。何でしょうか。

 

A.

小さなリンゴのようなものは、ナラメリンゴフシという虫えい(虫が作るこぶ)です。ナラメリンゴタマバチがコナラの冬芽に卵をうみつけたためできたものです。ほぼ球形の虫えいで、表面はなめらか、淡緑色〜黄緑色で日の当たる面はリンゴのように赤く色づきます。内壁はスポンジ状で柔らかく、虫室が放射状に配列しています。そこに70〜80匹の幼虫が入っていてサナギ(蛹)になり、5〜6月に雌雄(有翅)が羽化します。交尾後の雌(両性世代)がコナラやミズナラ、カシワなどの根に産卵します。できる虫えいはナラネタマフシと呼ばれます。これから無翅の雌(単性世代)が12月に脱出してきます。これが樹上に這い上がって冬芽に産卵してできるのがナラメリンゴフシです。外国でも同じような例があり、英名をオークアップル(oak apple)といいます。

 

Q19.

ちなみに、虫えい(虫が作るこぶ)の名前の付け方を教えてください。

 

A.

虫えいの名前の付け方は「植物の種類」+「形成部位」+「形状」+「フシ(五倍子)」とされ、ナラメリンゴフシ(楢・芽・林檎・五倍子)です。コナラやミズナラには、もう一つよく目にするナラメイガフシ(楢・芽・毬・五倍子)という虫えいがあります。これはナラメイガタマバチが作るもので、多くの針状片に包まれたイガ状の虫えいです。

 

Q20.

葉っぱをはがきとして使うことができる「はがきの木」は、どんな木ですか。

 

A.

本州では静岡県以西、四国、九州や中国南部山地の常緑広葉樹林内に生育する、モチノキ科のタラヨウという木です。樹高は10〜30mになり、葉の大きさは長さ10〜17cm、幅6〜7pの楕円形で、縁に鋭いギザギザ(鋸歯)があります。葉裏は黄緑色で、傷つけると黒く変色するので、インドで葉に経文を書くヤシ科の多羅樹(ワチヤシ)になぞらえてタラヨウと名付けられました。葉の裏を細い棒で引っかくと文字が書けます。これは酸化酵素の作用で、酵素がタンニンに働き色素を生ずるためです。
平成9年(1997)に、当時の郵政省がタラヨウを「郵便局の木」、「はがきの木」として制定し、各地の郵便局でイメージアップのためのシンボルツリーとして植樹されたと伝えられています。タラヨウの葉っぱは、はがきとして郵送する場合は定型外ということで120円の切手が必要です。

 

Q21.

カイヅカイブキの葉っぱが触ると痛いトゲトゲのスギの葉っぱのような針葉に変わって出てきました。どうしてですか。

 

A.

カイヅカイブキの葉は普通うろこ状の葉っぱですが、スギの葉のような針葉に変わったというのは俗に葉っぱが化けたといわれるもので、カイヅカイブキの葉の先祖帰りと言われる現象です。もともとカイヅカイブキはイブキ(ビャクシン)の園芸品種です。イブキはヒノキの葉のような鱗片葉の葉とスギの葉のような針葉の2型があります。この葉っぱの変化は強い剪定によって原種のもっていた古い形質が現れたということで「先祖帰り」などと呼ばれるのです。

 


花・実に関すること

 

Q01.

樹木のオス(雄)とメス(雌)について教えてください。

 

A.

樹木には、雄株(オスの木)と雌株(メスの木)とういうように性別のあるものがあります。例えば、秋に黄葉するイチョウには、その実のギンナン(銀杏)のなる雌株とならない雄株があります。
また、植物の花には、サクラのように一つの花の中に雄しべと雌しべの両方を着けている「両性花」,雄しべか雌しべのいずれか一方しか着けていない「単性花」があります。単性花で雄しべしか着けていない花を「雄花」、雌しべしか着けていない花を「雌花」といいます。そして、同じ一本の樹木に雄花と雌花の両方を着ける樹木を「雌雄同株(しゆうどうしゅ)」、雄花は雄株に、雌花は雌株にと雌雄別々の樹木に着けるものを「雌雄異株(しゆういしゅ)」といいます。
植物の多くは両性花ですが、単性花を着けるものもかなりあります。また、両性花と単性花を一緒に着けるものもあります。

 

Q02.

タケ(竹)に咲く花について教えてください。

 

A.

タケは60年に1回花が咲いて枯れるといわれ、長期1回開花型の植物として知られていますが、開花の周期ははっきりとはわかっていません。
タケやササの花は花穂に集まってつき、イネやオオムギの花や実に似ています。めったに開花しませんが、花を着けると全部枯れてしまいます。最近では、1930年に開花結実して枯れた竹林で、発芽した実生苗から育てたモウソウチク林が67年目の1997年に全個体が開花結実し枯死したという事実が報告されています。

 

Q03.

1本の樹木が赤と白の花を同時につけていることがありますが、どうしてですか。

 

A.

スイカズラ科のハコネウツギやニシキウツギは、赤い花と白い花を着けます。これらの花は、はじめ白色で次第に紅色に変化します。このため、赤と白の花を咲き分けているように見えます。ニシキウツギの名はそれをよくいいあらわしています。
また、ウメの品種の中には、突然変異によって遺伝子が変化し、1本の木で白と赤の花を咲き分ける性質をもったものがあります。

 

Q04.

多くの花は暖かくなってから咲きますが、寒くなると花が咲く樹木があります。どうしてですか。

 

A.

ボタンの花は普通初夏に咲きますが、冬に咲く寒ボタン(冬ボタン)の花は、ボタンの遺伝子の突然変異によって低い温度でも咲くように変わってきたものです。
また、サクラにも冬に咲くフユザクラ(冬桜)、シキザクラ(四季桜)、ニキザクラ(二季桜)などがあります。
冬に咲く花木は多くはありませんが、ヤツデ、ロウバイ、マンサク、ヤブツバキなどがあります。

 

Q05.

黄色や緑色の花をつけるサクラがあるそうですが、ほんとうですか。

 

A.

黄色い大輪八重の花を咲かせるサクラは「ウコン」というサトザクラの栽培品種で、アサギ(浅黄)とも呼ばれます。咲き始めの花弁は黄緑色で、花が散る頃には赤味を帯びてきます。黄色い染料をとる植物のウコンになぞらえて名前がつきました。
花が緑色の八重ザクラは、「ギョイコウ」(御衣黄)という名のサトザクラの品種です。花は中輪八重で、緑黄色の花弁は緑の筋が目立ち外側にそり返ります。満開の時期を過ぎると花弁中央に赤い線が現れて、緑・白・赤の3色の筋に見えます。

 

Q06.

アジサイは植える土によって花の色が変わるそうですが、どうしてですか。

 

A.

アジサイを植えたら花が赤紫色になったとか、紫色になったといわれます。これには土壌の酸度が影響しています。アジサイの花の色は、酸性土壌では青みが強くなり、アルカリ性土壌では紅色に変わるからです。

 

Q07.

ソメイヨシノが秋に咲きました。どうしてですか。

 

A.

春に咲くソメイヨシノなどが秋に花を着けることがあります。サクラの「返り咲き」とか「狂い咲き」といわれる現象です。
通常ソメイヨシノやヤマザクラなどは夏から秋のはじめに冬芽を形成しますが、秋になって日照時間が短くなってくると、それを感知して葉は冬芽の休眠を促進する物質(成長抑制物質)を作って冬芽(花芽、葉芽)に送ります。そして,冬芽は翌春まで休眠します。
ところが、8月から9月頃に台風や虫害等で落葉したり、葉が大きな被害を受けたりすると体制が狂い、花芽は休眠できずに10月頃の気温が下がっていく時期に訪れる暖かい陽気にさそわれて開花するものと考えられます。

 

Q08.

コブシやタムシバなどの蕾(つぼみ)の先端はそろって北を向くそうですが、ほんとうですか。

 

A.

コブシの花芽は毛が密生したりん片に包まれて、寒さに耐えて冬を越します。そして、3月下旬頃の開花前に蕾の先端はみな北を指します。この頃はまだ寒さの残る頃ですが、それでも暖かさを増してくる春の陽光を受けて蕾の南側が膨れ、先端が北を向くのです。
これは、コブシやタムシバ、庭木のモクレン、ハクモクレンなどのモクレン科の樹木に見られる性質です。このため、「コンパス・プラント」とか「方向指示植物」等といわれます。

 

Q09.

コブシとタムシバの花の違いについて教えてください。

 

A.

コブシとタムシバの花はよく似ていますが、花の下に1枚若葉がつくのがコブシで、タムシバは花の下には葉がつきません。

 

Q10.

エゴノキの枝先に淡緑色のハスの花のようなものがたくさんついていました。何でしょうか。

 

A.

エゴノネコアシアブラムシの幼虫がエゴノキの冬芽に寄生してできた虫えい(ゴール)で、「エゴノネコアシ」と呼ばれています。バナナ型の長さ3cmほどの袋が放射状に集まった様子をネコアシ(猫足)に例えて名付けられました。

 

Q11.

樹木の実でブルーベリーのようにおいしいものや食べてもよいものを教えてください。

 

A.

食べられる樹木の実にはたくさんの種類があります。昔の子どもは、庭先のグミ(トウグミ,ビックリグミ)やイチイの実、畑のクワの実、山のアケビなどをよく食べました。
おいしい野イチゴの仲間には、クサイチゴ、モミジイチゴ、ナワシロイチゴ、クマイチゴ、ミヤマウラジロイチゴなどがあります。また、冬に実をつけるフユイチゴやミヤマフユイチゴがあります。
ハイキングなどで高原等に行けば、クロマメノキ、オオバスノキ、クロウスゴなど“山のブルーベリー”に出会えます。また、秋の野山にはクリ、スダジイ、マテバシイ、ガマズミ、エノキ、オニグルミ、ヤマボウシ、ブナなど、食べられる樹木の実がたくさんあります。

 

Q12.

マングローブの種子について教えてください。

 

A.

マングローブの林は、メヒルギ、オヒルギ、ヤエヤマヒルギなどのヒルギ科植物が主体となっています。これらの果実は、枝についたまま発根して(正確には胚軸を伸ばして)細長く伸長し、重くなると落下します。そして、地面に定着してから直ぐに発根します。泥にささるのはごくわずかで、たいていの果実は流れ着いたところで発芽して生長します。

 

Q13.

樹木の実で毒のあるものがありますか。

 

A.

樹木の実には強い毒成分をもつものがあり、ドクウツギ、ミヤマシキミ、ヒョウタンボクなどの実があげられます。特にドクウツギの実は毒性が強く、毒草としてよく知られているトリカブトやドクゼリと並ぶ猛毒の植物です。

 

Q14.

ドングリが多くつく年と少ない年がありますが、その原因は何ですか。

 

A.

ドングリという果実(堅果)をつける樹木は、ブナ科のナラやカシ類、シイ類、ブナなどです。ドングリなどの結実は年によって豊凶の差が見られ、一般にクリは1年おきに豊作になり、クヌギやコナラは2〜3年目に、ブナは5〜6年目に豊作になります。
樹木の開花・結実には、気象条件と樹体内の貯蔵養分の多少が影響します。豊作や大豊作は、樹体内に一定量の養分が蓄積された時に起こります。そして、結実すると、貯蔵養分は著しく消費され、再び養分が蓄積されるまで、何年かはあまり結実できないということになります。こうして種子の豊凶の周期が生ずるものと考えられます。

 

Q15.

自家受粉する植物では、動物の場合の近親婚のような害はないのですか。

 

A.

多くの植物は同一の花に雄しべと雌しべの両方がある両性花を咲かせます。この場合、自分の花粉を自分の雌しべにつけて受粉、受精ができ、別の個体がなくても子孫を残すことができるという利点がありますが、この自家受粉(自殖)では、他家受粉(他殖)の場合には現れてこない劣性有害遺伝子の発現につながり、極端な場合には劣性致死遺伝子が発現するなど、子孫に異常が出る確立が高まります。このような自殖による子孫の生存力の低下を近交弱勢と呼びます。

 

Q16.

自殖(自家受粉)による近交弱勢の発現を防ぐことはできないのですか。

 

A.

近交弱勢が子孫に発現するのを防ぐために、他殖(他家受粉)を促進するメカニズムが発達しているといわれており、その代表的なものが雌雄異熟という現象です。1つの花で雄しべと雌しべの成熟する時期がずれて、同じ花の中では受粉、受精が起こらない仕組です。例えば、モクレンの雌しべは雄しべより先に成熟し、雄しべが成熟して花粉を出す頃には、雌しべはしおれてしまいます。
また、雄しべと雌しべが同じ時期に成熟するものでも、自分の花粉が自分の雌しべについた時には、受精が成立せず種子ができないものがあります。この性質を自家不和合性といいます。

 

Q17.

秋と春の2回咲くサクラがありますか。

 

A.

主なものとしてジュウガツザクラ(十月桜)、シキザクラ(四季桜)、フユザクラ(冬桜)、フダンザクラ(不断桜)など、数種類あります。
花が白色、小輪の八重咲きのジュウガツザクラと、花が淡紅色、小輪の花弁が5枚で一重咲きのシキザクラは、マメザクラとエドヒガンの種間雑種と考えられており、10月〜12月、そして3月中旬〜4月上旬の2回花をつけます。
フユザクラはマメザクラと他の種類のサクラとの種間雑種といわれ、11月〜12月と3月下旬〜4月上旬に白色小輪の花を咲かせます。また、フダンザクラはヤマザクラ系統のサクラといわれ、白色、小輪一重の花をつけます。10月〜5月頃まで続けて花が見られることから、不断桜の名がつきました。
このように秋と春の2回咲くサクラは、当年に形成された花芽の約30%が秋に開花し、残りの約70%の花芽が翌春に開花するといわれています。

 

Q18.

シロダモの花と実は同じ時期に見られるそうですが、どんな花や実がいつ頃見られるのですか。

 

A.

シロダモは晩秋に黄褐色の花が咲き、冬を越して翌年の秋に赤い実をつけるので、花と果実を同時に見ることができます(雌雄異株の樹木であり、果実は雌木にしかつきません。)。なお、花と果実が同じ時期に見られる樹木には、このほか、同じクスノキ科のカゴノキやハマビワがあります。

 

Q19.

ヤマブキには実がならないそうですが、どうしてですか。

 

A.

実をつけないのはヤエヤマブキです。春に山吹色といわれる黄金色の花をつけるヤマブキは、万葉集や源氏物語等多くの古典に登場し、古くから、実をつけない八重咲きのヤエヤマブキが知られていました。ヤエヤマブキはヤマブキの園芸品種で、雄しべが花弁に変化して八重になったもので、雌しべも退化しており、このため果実ができないのです。

 

Q20.

一重咲き、八重咲きとは本来どういうことですか。

 

A.

八重咲きとは、花弁あるいは花被の数が、その種の基本数よりも多い花のことで、本来の数のものを一重咲きといいます。八重の程度により半八重、八重、菊咲きなどと呼ばれ、区別されることがあります。

 

Q21.

ネコにマタタビを与えると酔ったように興奮するのはどうしてですか。

 

A.

旅人がマタタビの塩漬けの実を食べて元気を取り戻し、また旅を続けることができたという、語呂合わせのような話のあるマタタビですが、ネコの好物であることは確かです。
ネコが特別の反応を示すのはマタタビのマタタビラクトン、アクチニジンという成分がネコの中枢神経に作用するからで、ネコは陶酔状態になります。子ネコよりも大人のネコ、雌ネコよりも雄ネコの方が反応が強いといわれています。なお、マタタビによく似たミヤママタタビは、ネコには好まれないといわれています。

 

Q22.

食用に使われる松の実は、何というマツの種子ですか。

 

A.

料理などに使われる「松の実」は、チョウセンゴヨウ(朝鮮五葉、別名チョウセンマツ)の種子です。中国名は「紅松」と呼ばれます。チョウセンゴヨウは、ロシアの沿海州から中国北東部や朝鮮半島北部にかけて分布し、日本では本州中部、四国などの亜高山帯に自生しています。球果(松ぼっくり)は日本のマツの中では最も大きく、長さ9〜16cm、直径5〜7cm。1個の球果には80〜160個の種子が入っています。
なお、このほかに、食用にされる松の実には、イタリアカサマツ(ヨーロッパ)、ピニョンマツ(北米南西部)、メキシコマツ(メキシコ)などの種子があります。

 

Q23.

生の青いウメの実には毒があるといわれますが、ほんとうでしょうか。

 

A.

青梅のタネ(種子)や果肉には糖と青酸が結合した青酸配糖体の一つであるアミグダリンという有毒物質が含まれており、生食すると食中毒を起こすことがあります。特にウメの未成熟の種子の核に多く含まれているアミグダリンは、植物性の自然の有毒物質として知られています。ウメの果実が熟すと青酸配糖体が分解されて、人間や動物にとって食べやすくなります。青酸配糖体はウメの未熟な実を害虫から守るためのものと考えられています。なお、青梅を梅干し、梅酒、砂糖漬けなどに加工して長期間漬けこむことは毒素の分解を促進します。青酸配糖体の分解が進んで、無毒化しているものと考えられます。

 

Q24.

赤い実が目立つドクウツギは猛毒といわれますが、どんな木ですか。

 

A.

海岸砂丘や荒地などでよく見られるドクウツギ、特にその果実は猛毒として知られており、イチロベエゴロシ(一郎兵衛殺し)、オニゴロシ(鬼殺し)などの別名があります。果実には甘みがあり、昔は子どもが食べて死亡する事故が多かったといわれます。黒熟した果実は毒成分が抜けているといわれますが、確認はされていないので、絶対に口にしてはいけません。毒成分は猛毒のアルカロイドで、コリアミルチン、ツチンなどの有毒成分を含んでいます。人が食べると吐き気、けいれん(痙攣)、呼吸困難に陥り、場合によっては死に至るといわれます。茎や葉も有毒です。ドクウツギは、トリカブト、ドクゼリと並び日本の三大毒草として挙げられています。

 

Q25.

カキノキについて、渋柿と甘柿の違いを教えてください。

 

A.

山地で出会うヤマガキをはじめカキノキは渋柿が多いようです。渋柿は樹上で渋が抜けますが、果実が軟化するまでは渋いままです。甘柿は成長の後半に渋味を持つタンニン物質が固まり、水に溶けなくなるため甘く感じるのに対し、渋柿は成熟してもタンニンが固まらなかったり、部分的にしか固まらなかったりするので渋みを感じます。渋柿でも熟柿になると渋が抜けます。渋味の原因はタンニン物質(シブオール)で、これが消えるか水溶性から不溶性に変わることで渋が抜けると言えます。甘柿の代表が「富有」で、渋柿の代表に「平核無(ひらたねなし)」があります。甘柿は渋柿の突然変異種と言われ、日本原産ではないと考えられています。渋抜きの方法として、アルコールや炭酸ガスを使う脱渋が実用化されています。

 

Q26.

カツラの花について教えてください。

 

A.

カツラは雌雄異株の樹木です。そのため、雌花と雄花は別々の木につきます。カツラの花は、花弁も萼も無く雄の木につく雄花の葯は紅紫色で、雌の木には雌花のほか雌しべと雄しべの両方がある両性花がつきます。雌花の花糸も紅紫色で、よく目立ちます。長年樹木観察をしている人や、ツリーウオッチングに興味をもつ人にぜひ見てほしい木の花です。カツラの花にはめったに出会えないので、見た人はラッキーです。ハイレベルの樹木観察になります。なお、カツラの花に似た木の花にフサザクラがあります。この花も花弁や萼が無く、暗紅色の花が束になってつきます。

 


幹・根に関すること

 

Q01.

樹木の年輪について教えてください。

 

A.

樹木を輪切りにすると、中心を同じくする色の濃い輪になった筋が何本も見えます。この筋が年輪です。年輪は毎年1本ずつできるので、この数を数えると樹木の年齢がわかります。
日本では、樹木は春から秋にかけて生長しますが、春から夏は生長が早く、形の大きい薄い膜の細胞ができます。一方、夏から秋にかけては、小さくて膜の厚い細胞ができ、やがて冬になると生長が止まります。春から夏にできた部分(早材)は淡い色に見え、夏から秋にできた部分(晩材)は色の濃い筋に見えます。そして、これが毎年繰り返されて年輪ができます。なお、四季の変化の少ない熱帯地方の樹木は、一年中同じように生長するので年輪はできません。

 

Q02.

重くて水に沈む樹木があるそうですが、どんな樹木ですか。

 

A.

樹木には、重いものや軽いものがあります。世界で一番重い樹木として知られている「リグナムバイタ」は,重くて水に沈みます。十分に乾燥させた樹木の比重(水と比べた重さ)が1よりも大きければ水に沈み,小さければ水に浮きます。リグナムバイタの比重は1.23ですから,水に入れると完全に沈んでしまいます。
逆に世界で一番軽い木といわれる「バルサ」の比重は0.17です。バルサは水に浮くというより,水の上に乗るという感じです。主な樹木の比重は,キリが0.33,スギが0.38,ブナが0.63,シラカシが0.99です。

 

Q03.

樹木によって重い・軽いの差(比重の違い)が出るのはなぜですか。

 

A.

樹木の重い・軽いの差、つまり十分に乾燥させた樹木の水に比べた重さ(比重)の違いは、木材の中に含まれる空気の量によります。木材は無数の中空の細胞からできており、その構造は蜂の巣に似ていることからハニカム構造と呼ばれています。バルサやキリなど軽い樹木ほど孔隙がたくさんあって多量の空気を含んでいます。

 

Q04.

高さが最も高い樹木について教えてください。

 

A.

世界で最も樹高の高い樹木はアメリカのカリフォルニア州にあるセコイアで111m、日本ではアキタスギのキミマチスギで58mもあるといわれています。

 

Q05.

マングローブの根は地上に出ていますが、どうしてですか。

 

A.

マングローブの林は、泥土の中から突き出して地下の根の呼吸を助ける呼吸根や泥の中で倒れないようにタコ状に伸ばした支柱根等が見られ、特徴のある景観となっています。

 

Q06.

つる植物のつるの巻き方は、左・右どちらかに決まっているのですか。

 

A.

つる植物は,他の植物等に巻きついて、太陽の光を浴びようと上に向かってらせん状に伸びていきます。つるの巻きつき方には、真上から見て時計回りの右巻きとその反対の左巻きがあります。
フジのつるは右巻きですが、同じマメ科のヤマフジは左巻きです。アサガオをはじめヒルガオ科の植物は、左巻きで伸びていきます。アケビやミツバアケビも左巻きです。つる植物は左巻きが多いようです。ツルドクダミなどのように同種でも巻く方向が異なるものもありますが、つるの巻く方向は、種の特性として遺伝的に決まっているものと考えられています。

 

Q07.

つる植物のつるは、どのようにして支柱に巻きついて伸びるのですか。

 

A.

つる植物が支柱を巻き込むように曲がる仕組みは、まだよくわかっていないようです。つるの先端が他のものと接触すると、それに巻きつきながら伸びていきます。その場合、茎の周囲の細胞の伸びる速さは同じではなく、巻きつく相手に接触していない側の細胞の方が接触している側の細胞より大きく伸びることから、つるの先端は相手に巻きついて回転しながら伸びていくものと考えられます。

 

Q08.

ツクバネという木は半寄生植物ということですが、どのような木ですか。

 

A.

ツクバネ(ビャクダン科)は、果実が羽子板でつく追羽根に似ていることから「衝羽根(つくばね)」の名がつけられました。この木は半寄生の植物で、根は付近の他の植物の根に寄生して生活しています。このツクバネのように、葉は葉緑体をもち光合成を行って炭水化物をつくる一方、根では他の植物に寄生していろいろな養分を吸収して生活するものを半寄生植物と呼んでいます。同じビャクダン科のカナビキソウも半寄生植物です。

 

Q09.

寄生植物のヤドリギは、どのような生活をしているのですか。

 

A.

冬になると、落葉中のエノキやケヤキなどの大木の枝に、球形状に繁茂したヤドリギ(ヤドリギ科)がよく目につきます。ヤドリギは寄生木と書きます。宿主の枝や幹に食い込んだ寄生根から養分や水分を吸い取ります。自分でも光合成をするので、半寄生植物です。
ヤドリギは雌雄異株で、3月頃の早春に小枝の先に淡黄色の花をつけ、晩秋11月頃に熟す実は淡黄色の液果で目立ちます。粘液質の果肉に包まれた種子は、小鳥に食べられて散布されます。鳥に運ばれた種子は,宿主となる樹木に粘着して発芽します。ヤドリギの仲間には、実が赤く熟すアカミヤドリギやホザキヤドリギ、ヒノキバヤドリギなどがあります。

 


その他のこと

 

Q01.

樹木は何年くらい生きるのですか。

 

A.

樹木は地球上で最も長く生きることのできる生物です。特にスギは長命で、屋久島のヤクスギ「大王杉」は樹齢3,000年といわれ、日本の樹木として最高の樹齢となっています。世界ではアメリカ合衆国ネバダ州のイガゴヨウマツで、その年輪は4,844であったといわれています。
また、日本の他の樹種の長寿の記録には、針葉樹ではヒノキ1,065年、ハリモミ800年、アカエゾマツ586年、コメツガ550年、広葉樹ではブナ435年、ミズナラ444年、サカキ353年、ダケカンバ270年等があります。なお,屋久島のヤクスギ「縄文杉」は樹齢7,200年といわれたこともありますが、現在は2,170年と推定されています。

 

Q02.

大気汚染や排気ガスに強い樹木がありますか。

 

A.

大気汚染による被害は、イオウ酸化物やチッソ酸化物、工場や自動車等の排気ガスが大気中に拡散して起こります。こうした大気汚染や排気ガスに耐性のある樹種として、針葉樹ではカイズカイブキ、カヤ、イブキなどがあり、広葉樹ではモッコク、マテバシイ、トベラ、シャリンバイ、スダジイ、サンゴジュ、モチノキなどがあります。
一方、アカマツ、スギ、モミ、ヒマラヤシーダなどの針葉樹やケヤキ、ソメイヨシノ、ポプラ、イロハモミジなどの広葉樹は、大気汚染に弱いことが知られています。

 

Q03.

樹木の香りについて教えてください。

 

A.

樹木の香りの成分は揮発性の成分で、幾種類ものテルペン類のほか多くの化学物質が含まれています。
スギやヒノキなどの針葉樹には、アルファ・ピネン、リモネンなどのテルペンが含まれています。クスノキには、カンファー(樟脳)などの香り成分が含まれています。オオシマザクラの葉にはクマリンという芳香成分が含まれていて、桜餅の葉として利用されます。
このほか、香りの目立つ樹木には、イチイ、アスナロ、タブノキ、ヤブニッケイ、シロダモ、クロモジ、サンショウ、シキミ、クサギなど多くの種類があります。

 

Q04.

きのこのように毒のある樹木がありますか。

 

A.

樹木にも毒のあるものがあります。アセビ、シキミ、ヤマウルシ、ユズリハなどです。
例えば、アセビには植物全体にアンドロメドトキシンなどの強い毒成分が含まれていて、間違って食べると神経中枢の麻痺症状を起こすといわれています。

 

Q05.

寒い地方では樹木が凍結して割れることがあるそうですが、ほんとうですか。

 

A.

樹木の幹が厳寒期に氷点下の温度に冷却されて凍結し縦に割れる現象で、「凍裂(とうれつ)」といいます。日本では、北海道のトドマツやポプラなど、本州ではスギの凍裂が知られています。
凍裂は、−20℃以下の急激な低温により多発するといわれています。スギの場合、北関東では冷え込みの特に厳しい冬に−10℃以下の低温に長くさらされて発生するようです。
凍裂の発生しやすい樹種は、針葉樹ではトドマツ、アオモリトドマツ、スギなど、広葉樹ではポプラ、ドロノキ、ハルニレ、ヤチダモ、アサダ、ミズナラなどがあげられます。

 

Q06.

アフリカにバオバブという樹木があるそうですが、どんな樹木ですか。

 

A.

幹が太く、巨大な徳利のようになり、その頂から腕を伸ばして広がる枝。奇妙な樹形のバオバブは別名「アフリカ・サバンナの王様」ともいわれています。
アフリカバオバブ(アンダソニア・ディギィタータ)は、パンヤ科の巨木で高さ15m、直径10m以上になり、樹齢は2,000年を超えるといわれています。若葉は野菜として使われ、種子も食用となり、大変役に立つ樹木といわれています。
バオバブ属は、主として熱帯乾燥地域に9種知られていて、うちマダガスカル島に7種分布しています。

 

Q07.

樹木が数十mもの高さまで水を吸い上げることができるのはどうしてですか。

 

A.

植物の体内で起きる水の引き上げの仕組みは根毛から始まります。浸透現象によって地中の水が根毛に入ってきます。そして、葉から水分が水蒸気として失われていく蒸散作用という現象によって行われます。
葉から失われる水はすべて根から補給されます。この水は、幹や枝を走るたくさんの細い導管を毛管現象によって上へと引っぱり上げられます。それは、水自身の持つ凝集力で堅く結びついた水柱のようなものとなっています。
こうして、水は植物体内で水の分子が互いに強く引き合う力によって、根から葉まで木部を通じて途切れることなく繋がっていて、80mも100mもある高い樹木の先端まで導管を上がっていくことができるものと考えられています。

 

Q08.

テレビのCMに出てくる「この木何の木、気になる木」は、何という樹木ですか。

 

A.

この“気になる木”は、アメリカネムノキ(アルビジィア・サマン)という樹木です。熱帯アメリカ原産のネムノキ科の樹木で、高さ25m以上になる常緑高木です。横に枝を広げた傘形の樹冠は直径30mにも達するといわれます。こうした傘形からの連想や雨の前に葉を閉じることから“レイン・ツリー”と呼ばれています。また、この樹木は、熱帯地域の都市緑化を目的に、街路樹や公園樹木として植えられています。

 

Q09.

植物園で「ハンカチノキ」に出会いました。どんな樹木ですか。

 

A.

ハンカチノキは大変珍しい樹木ですが、最近はあちこちの植物園に植えられていて目にすることができるようになりました。5月の連休の頃、白いハンカチを2枚つまみあげたような印象的な花を咲かせます。このハンカチのようなものは花弁ではなく花序についた総苞片(そうほうへん)です。英名もハンカチ・ツリーといいます。
ハンカチノキは、1869年に中国四川省で発見された樹木で、現在では中国南西部の標高2,000m付近の山地だけに生育しており、まさに生きた化石です。

 

Q10.

「サクラ切るバカ、ウメ切らぬバカ」という言葉があるそうですが、どういう意味ですか。

 

A.

大切な樹木を育てるための心得や戒めの言葉として、よく知られています。
サクラの枝を切ると切り口から腐れが入り、枝枯れやひどい場合には樹木全体が枯れてしまいます。一方、ウメの枝は切っても腐れが入ることが少なく、切らないで放っておくと徒長した枝が密生してくるので剪定が必要になります。また、ウメの花芽は短い枝に多くついて長く伸びた徒長枝にはあまりつかないので、徒長枝は剪定する必要があるという教えです。

 

Q11.

イチョウは生きた化石といわれますが、どうしてですか。

 

A.

イチョウは針葉樹(球果植物類)よりも古く、現存する植物の中で最も古い化石の記録をもち、恐竜が活躍した1億5千万年前の中生代ジュラ紀に最も栄えた植物群のイチョウ目の唯一の生き残りで、まさに“生きた化石”です。

 

Q12.

樹木と季節には「椿(つばき)」、「榎(えのき)」、「柊(ひいらぎ)」のような関わりがありますが、木偏に秋と書く「楸」という樹木はありますか。

 

A.

楸は「ひさぎ」と読みます。アカメガシワ(トウダイグサ科)又はキササゲ(ノウゼンカズラ科)のことといわれています。広辞苑にも記載されています。
万葉集にひさぎ(久木)が詠まれており、この場合の久木(ひさぎ)はアカメガシワです。アカメガシワは新芽が赤く、カシワの葉のように食物をのせるのに使ったことから名付けられたといわれます。

 

Q13.

キョウチクトウは有毒植物といわれていますが、どのような樹木ですか。

 

A.

キョウチクトウ(キョウチクトウ科)は、庭木や公園樹木としてよく植えられており、また、排気ガスなど大気汚染に強い木として知られ、高速道路沿いや工場の緑地帯に植えられたものが目につきます。
有毒植物として知られており、その毒性成分は主にオレアンドリン、アディネリンとう成分で、葉、花、枝等、植物全体に含まれています。この成分には強心作用があり、少量を用いると心臓病に効果があり強心剤となりますが、摂取量が多くなると毒になります。
古くから、猛毒植物として、キョウチクトウの枝を焼き肉の串や箸等として使用したことなどによる事故や事件が伝えられており、キョウチクトウは身近に最も多く見られる有毒植物です。

 

Q14.

木造の古い建物について教えてください。

 

A.

奈良の法隆寺の西院伽藍は、世界最古の木造建築として知られています。実に1,300年以上もの間、風雪に耐えてきています。これは、一流の宮大工が最高級のヒノキ材を用いて建立し、メンテナンスを欠かさず行ってきたことが最大の要因と考えられています。
法隆寺を含めて1,200年以上前につくられた薬師寺の東塔、正倉院、唐招提寺の金堂等、現在までほとんどそのまま残されているものが20数棟あります。

 

Q15.

法隆寺の建物が長持ちしているのはどうしてですか。

 

A.

1,300年以上も前に建てられた法隆寺西院伽藍にはヒノキ材が使われています。ヒノキは、非常に耐久性のある木です。ヒノキ材の強度は、伐採直後から増大し続けて200〜300年後に最大に達し、その後はゆっくりと低下し、1,000年経過してもなお低下は大変に小さいといわれています。
法隆寺の場合、建立後1,300年の現在の強度は、伐採直後の強度とほぼ同じ程度と推定されています。そして、その古材の表面を削ると新しい木肌があらわれ、今でも芳香を放つといいます。

 

Q16.

タケとササは、どうちがうのですか。

 

A.

タケやササは、イネ科の植物の中でタケ亜科という仲間をつくっています。タケノコが生長して成竹となったとき、皮(稈鞘(かんしょう))がはがれ落ちるものをタケ、はがれ落ちないものをササと呼んでいます。

 

Q17.

セイタカアワダチソウなどのように、外国からわが国に入ってきて野生化しているものが樹木にもありますか。

 

A.

身近に見られる帰化植物としてセイタカアワダチソウのほかに、セイヨウタンポポ、シロツメグサ、オシロイバナ、ヒメムカシヨモギなどがあります。また、帰化植物の種類は、外国との交流が盛んになるにつれて増加し、明治の初め頃50種、明治末期100種、戦後400種、現在は1,500種以上といわれています。
樹木では、公園樹木や街路樹、砂防用樹種として明治時代初期に導入されたハリエンジュ(マメ科、別名ニセアカシア、北アメリカ原産)、公園樹木のニワウルシ(ニガキ科、別名シンジュ、中国原産)などが、各地の河川敷や道路沿いの土手等でよく見られます。

 

Q18.

サンショウとイヌザンショウの違いを教えてください。

 

A.

サンショウは葉をちぎるとさわやかな香りがしますが、イヌザンショウには臭みがあり食用にはされません。とげのつき方は、サンショウの枝や葉柄の基部にはとげが対生していますが、イヌザンショウは1個ずつ互生しています。なお、サンショウにはとげのない品種もあり、アサクラザンショウと呼ばれています。

 

Q19.

蜂蜜の蜜源植物といわれるアカシアは、どんな木ですか。

 

A.

それはニセアカシア(マメ科ハリエンジュ属)です。学名はロビニア・プセウドアカシアで、種小名がそのまま使われています。プセウドは偽りの意味です。北アメリカ原産の樹木で、1873(明治6)年にわが国に渡来したといわれています。公園樹木や街路樹のほか、はげ山や荒廃地復旧等の治山・砂防用として広く用いられ、緑化植物として役立ってきました。花は香りがよく、アカシアの蜂蜜として良質な蜜源植物として知られています。なお、「アカシアの雨がやむとき」など、詩歌や文学で表現されるアカシアは皆このニセアカシアです。今でもフサアカシアやギンヨウアカシアなどの本物のアカシア(ネムノキ亜科アカシア属)の樹木と混同されることがあります。

 

Q20.

マタタビはどんな木ですか。

 

A.

マタタビは山菜としても利用されます。若葉や花はゆでてひたし物、和え物、炒め物などに、果実は生食、ゆでてひたし物、和え物、塩漬け、果実酒などに使われます。マタタビバエが果実に産卵してできた虫えいは木天寥(もくてんりょう)と呼ばれ、体を温める作用があり、強心、利尿、鎮痛、強壮などの漢方薬に用いられます。

 

Q21.

ゴールドクレストやスカイロケットなどコニファーと呼ばれる木は、もともとはどのような木ですか。

 

A.

コニファー(conifer)とはもともとは松ぼっくりなど球果をつける植物やコニカル、すなわち円錐形になる植物という意味で、針葉樹のことを指していますが、一般には園芸品種の針葉樹や観賞価値の高い針葉樹のことをコニファーと呼んでいます。
ゴールドクレストは、北アメリカの太平洋岸を原産地とするヒノキ科イトスギ属のモントレーサイプラスの園芸品種です。イギリスで作り出されたといわれ、強い日差しで黄金色になり円錐形の樹形が美しい木です。葉をちぎるとサンショウのような香りがするといわれます。なお、モントレーサイプラスには、このほかにオーレアという品種や鉢植え用の品種ウイルマなどがあります。
スカイロケットは、北アメリカ西部に分布するコロラドビャクシンの園芸品種です。名前のとおり樹形が素晴らしいので人気のある品種です。なお、コロラドビャクシンには、このほかにブルーへブン、ブルーエンジェルなど多くの品種があります。

 

Q22.

ナツツバキ(シャラノキ)は、平家物語の沙羅双樹のことですか。

 

A.

6〜7月頃に純白で気品のある花を咲かせるナツツバキは、庭木や公園木、街路樹などとしてよく見られるツバキ科の落葉広葉樹です。山地に自生する木ですが、むかしから寺院などに植えられていて、シャラノキ(沙羅樹)、シャラソウジュ(沙羅双樹)と呼ばれています。
平家物語の冒頭の「祗園精舎の鐘の声・・・沙羅双樹の花の色・・・」の沙羅双樹は、ナツツバキではありません。全く別種のインド中北部からヒマラヤ山麓に分布するサラノキ(シャラノキ Shorea robusta)のことです。この木はフタバガキ科の落葉高木で、現地では「サル(sal)」と呼ばれ、その漢名が「沙羅」となり、これから和名が来ているといわれています。釈迦がクシナガラで入滅した時、その地の東西南北にこの木が2本ずつ生えていたという伝説から、沙羅双樹(サラソウジュ)と呼ばれるようになりました。その時、この木が真っ白に変わったといわれ、花が白くて清楚なナツツバキがこの沙羅双樹に見立てられたものと考えられています。

 

Q23.

ニワウルシは、どういう木ですか。

 

A.

ニワウルシ(ニガキ科)は、ウルシに似た葉や樹形の木ということから、その名前がつけられました。別名をシンジュ(神樹)といい、英名のツリー・オブ・ヘブンTree of Heaven(天国の木)に由来し、もともと天に届くほど高くなる木という意味でつけられました。ウルシの仲間ではないのでかぶれることはありません。
ニワウルシは中国原産、明治8年頃、街路樹や公園樹木としてわが国に導入され、各地に植えられました。また、ヤママユガ科のシンジュサン(神樹蚕)を飼育するために植栽されたといわれます。ウルシやオニグルミなど奇数羽状複葉をもつ樹木に似ていますが、ニワウルシは小葉の基部に1〜2対の先端が蜜腺となった鋸歯があることで区別できます。雌雄異株で、雌木には夏から秋に赤みを帯びたたくさんの翼果が見られ人目を引きます。近年、各地の河川敷や土手、道路沿いなどで多くの野生化したニワウルシが見られます。

 

Q24.

ナギという木は、どんな木ですか。

 

A.

ナギは広葉樹のような葉っぱをつけた常緑高木ですが、マキ科の裸子植物、つまり針葉樹の仲間で、雌雄異株です。暖地性植物で自然分布は紀伊半島南部、四国、九州南部などで、私たちが目にするナギはほとんどが植栽されたものです。関東地方では冬の寒さのため幼木は育ちません。関東地方が生育限界といえます。ナギの木はむかしから神社のご神木とされていて、神域に植えられてきました。また、ナギの葉は大切に守り袋に入れられて災いをなぎ払うお守りとされたといわれます。

 

Q25.

ウルシかぶれはどうして起こるのですか。

 

A.

ヤマウルシやウルシ(中国原産)などにによるかぶれの原因(アレルゲン)はウルシオールという分泌物質で、ウルシオールに対するアレルギー反応として引き起こされます。皮膚のタンパク質に反応するウルシオールに対して、リンパ球T細胞が防衛反応した結果といわれます。痛がゆくなって腫れ、赤く水ぶくれします。ウルシに触れたことで起こるアレルギー性接触皮膚炎です。ウルシに触れてから症状が出るまで1〜2日かかります(遅延型反応)。人によってさまざまで、過敏体質の人は、ウルシの下や近くを通っただけでウルシかぶれを起こします。

 

Q26.

ウルシの毒性について教えてください。

 

A.

日本の野山で見られるウルシの仲間(ウルシ科ウルシ属)で、特に毒性の強いものはツタウルシやウルシです。ヌルデでもかぶれる人がいます。かぶれの危険度は、「ツタウルシ>ウルシ>ヤマハゼ>ハゼノキ>ヤマウルシ>ヌルデ」のようになります。ウルシにかぶれたら、皮膚科の医者に手当てしてもらうことが肝要です。それでも、全治するまでに1〜2週間ほどはかかるようです。

 

Q27.

アフリカには「奇想天外」という不思議なめずらしい木があるそうですが、どんな木ですか。

 

A.

和名が「奇想天外」という植物は、学名がウェルウィッチア・ミラビリスという1科1属1種の大変めずらしい木です。1859年にオーストラリアの探検家ウェルウィッチによって、アンゴラで発見されました。属名はこれにちなんでつけられました。種小名ミラビリスは“奇異の”の意です。
この植物は、赤道直下のアフリカのナミビアとアンゴラのナミブ砂漠だけにしか生えていないものです。葉がたった1枚しかなく、奇怪な姿で砂漠上をのたうつ植物です。単子葉植物のような平行脈のある堅い葉は風によって縦に裂けやすく、何枚もの葉が伸びているように見え、ユリ科のオモトに似ているのでサバクオモトとも呼ばれます。茎は枝分かれせずコルク質又は木質で株状、高さは2mほどになります。左右の広がりは3mほどになり、枯れるまで2枚の葉がからむように伸び続けるといいます。分裂組織は葉の基部にあり、葉先から枯れていきます。寿命は長く、1,000年も2,000年も生き続けるといわれます。変わっているのは葉だけではなく、奇想天外は雌雄異株の裸子植物で、雌花は松笠のような球果をつけます。

 

Q28.

ヤマザクラ、カスミザクラ、オオシマザクラの見分け方を教えてください。

 

A.

ヤマザクラ、カスミザクラ、オオシマザクラは一見よく似たサクラです。野生のカスミザクラ、オオシマザクラも「ヤマザクラ」(山桜)と呼ばれることがあるので、注意が必要です。ヤマザクラ、オオシマザクラの開花はソメイヨシノと同じ頃か、少し遅れて咲きますが、カスミザクラは10日以上遅く咲きます。このため、ヤマザクラが満開になってもカスミザクラの花は見られないので、その違いが分かります。
また、ヤマザクラはシロヤマザクラ(白山桜)とも呼ばれ、花は白色一重の中輪ですが、よく見ると白〜淡紅色まで個体により微妙な変異があります。花と同時に開く若葉は紅褐色で、全体が赤っぽく見えます。オオシマザクラは大輪の白い一重の花と同時に伸び出す若葉があざやかな緑色で、ヤマザクラやカスミザクラとの違いが分かります。

 

Q29.

ブラシ状の花をつけるウワミズザクラというサクラの仲間があるそうですが、どんな木ですか。

 

A.

ソメイヨシノやヤマザクラと異なり、穂状に花をつけるウワミズザクラはサクラらしくないサクラの仲間です。開葉後に1年枝の先に総状の花序を出して多くの密生した白色の花を咲かせます。花はまさに5弁のサクラの花で、よく見れば迫力がありますが、咲く時期がソメイヨシノやヤマザクラよりも1カ月近く遅いので、あまり人に気づかれないようです。

 

Q30.

ウワミズザクラの名前の由来を教えてください。

 

A.

ウワミズザクラという名前は、牧野新日本植物図鑑によればウワミゾザクラ(上溝桜)の転訛したものであり、昔、亀甲で占いを行った時にこの材の上面に溝を掘って使ったので上溝というとあります。なお、ウワミズザクラの若い果穂や未熟な果穂を塩漬けしたものはアンニンゴ(杏仁子)と呼ばれ、日本料理などで珍重されています。赤く熟した実は果実酒に利用されます。

 

Q31.

ザクロの実はエキゾチックな感じがします。どこから来た木でしょうか。

 

A.

ザクロは最も古い果樹の一つといわれます。ザクロの原産地は西アジアで、地中海沿岸からヒマラヤ西部などに分布し、その中心が今のトルコ(イラン)といわれ、この地方では重要な果実とされているようです。西域からシルクロードを通り中国を経て多くの文物が日本に伝来したことはよく知られています。それらとともに西域からシルクロードを経てわが国にもたらされたものと思われます。
また、ザクロは1,000万年前から分布していた植物で、古代アジア、シリア、エジプトを経てギリシア・ローマに伝わったということで紀元前2,500年ごろのエジプトの墓でレリーフにザクロが描かれていたといわれ、ギリシア神話にも出てくるといわれます。日本には10世紀、平安朝のころに伝来したといわれます。

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